『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか』を読んで

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最近、市民協働政策に興味があり各都市の国際比較に勤しんでいます。

 

大学の専門分野が地理学なので、学びの一環として様々な本や文献を漁っているのですが、なかなか知識が体系化されなくて苦戦しております(ー ー;)

 

もう来月にはゼミ配属なのに、どんな研究できるんやろか自分。。。

 

さて、今回は最近読んだ本の中で、ドイツの地方都市について書かれた本のレビューになります。

(レビューというよりレポートかな??)

 

 

本の概要

著者:高松平蔵。2002年よりドイツ在住のジャーナリストで、もともとは京都の地域経済新聞社に勤めていた方だそうです。

 

タイトル:『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか -質を高めるメカニズム-』

 

発行:2016年9月発行。学芸出版社発行。

 

内容:筆者が滞在していた、ドイツ南部バイエルン州に属するエアランゲン市での取り組みをもとに、ドイツ地方都市がなぜ活気あるのかを調査。

 

 

構成とメインテーマ

本書の最大のテーマは

「ドイツって超クリエイティブ。だって人とのつながりが強いもん。」

ってことなのだと思います。

 

どちらも「真面目で勤勉」が国民性として挙げられる日本とドイツですが、まちづくりの面ではどのような違いがあるのでしょうか??

 

本書は全8章から構成されています。前半第1章と第2章では、ドイツ地方都市のまちづくりの概要について述べ、どのようにクリエイティブな都市なのかを説明しています。 

中盤第3章から第6章にかけて、街のコンパクト化、企業戦略、コミュニティ、文化活動に分けてまちづくりのソフト的な側面に触れて話を進めます。

後半第7章と第8章では、街の価値を測る様々な指標について言及し、創造性のループについて筆者なりのまとめを行っています。

 

 

ドイツはどのようにクリエイティブ??

この本を読んで、自分の中での「クリエイティブ」の定義が変わったような気がします。

 僕はこれまでの大学生活を通し、文系でありながらもITスキルへの関心を持ち続けてきました。そのため「クリエイティブ」というと、今まで誰も世の中に生み出したことのないような、派手で誰の目をも惹きつけるものをイメージしがちでした。

 

ただ、ドイツが持つクリエイティブ性って、そういった類のものというより、「もともとあった街の歴史や文化を、現代の形に表現し直したもの」なんだろうなあと思います。

例えば、街中にある歴史遺産を投稿し、唐突に「ここはどこでしょう??」といったフォトゲームが始まるFacebookグループがエアランゲンにはあるのだそうです。

 

 

ドイツはなぜクリエイティブ??

ドイツ都市の主な特徴は以下のつでしょう。

コンパクトシティ

②産官学連携

③フェライン

④移民を始めとする多文化社会

 

コンパクトシティ

ドイツは元祖コンパクトシティとして、真っ先に自転車型の道路設備を行った都市です。アウトバーンの導入により、自動車大国として今でも名高いドイツですが、近年では移動において自動車より自転車を選択する人が多く、環境都市としての成果を上げています。

他にも、スーパーでペットボトルを返却したらその分お金が返ってくる仕組みや、マイバックを常に持ち歩く国民性など、エコへの高い取り組みを行っています。

(参考:エコロジー先進国ドイツに学ぶ、エコな生活!ユニークなeco活動例まとめ - Latte )

 

②産官学連携

エアランゲンを中心に、オープンドアイベントという一種の科学フェスがあります。これは、組織や研究機関に一般の人々が訪れることができ、街で進められている最先端の研究に触れることができるイベントです。

さらには、地方銀行は芸術やスポーツといった面での社会活動をスポンサリングすることが当たり前となっており、言うなれば「金融地産地消」の仕組みが都市には備わっています。

 

日本でも学研都市は導入されつつあり、近年ではけいはんな地区が注目されつつあります。ただ、まだまだ日本では一般の生活と学術研究がかけ離れた位置にあるのではないだろうかと思います。

 

③フェライン

ドイツ地方都市のアクティビティを考える上で、最も重要な組織はフェラインになるでしょう。フェラインとは直訳すると「協会」のことであり、特にドイツではクライルガルデンというガーデニング団体が有名です。

本書によると、ドイツでは実に国民の36%がボランティアに従事しており、「一人は万人のために、万人は一人のために」の精神が根付いている市民協働型の都市といえるでしょう。

 

僕は普段から現代日本が抱える個人主義に疑問を感じています。超高齢者社会だからというだけでなく、「常に誰かと繋がっている感覚」というのは人生にやりがいを見い出す上で重要な要素ではないでしょうか。

例えば、千葉県柏市における「カシニワ制度」のように、自治体主体で住民同士をつなげるフィールドを生み出していくことが大事だと思います。

(参考:カシニワ かしわの庭・地域の庭 | 柏市役所 )

 

 

④移民を始めとする多文化社会

ヨーロッパ都市の特徴といえば、移民の存在というのは大きいのだと思います。日本とは違い、そもそも陸続きなので、「ドイツ人しかいない」という状況の方がなりにくいのは当然だと思います。

エアランゲンでは、ユグノーの受け入れから始まり、高度経済成長期には出稼ぎ労働者であるガストアルバイターという人々が流入したという背景があります。

 

こうしてみてみると、日本にある「周りに合わせる」という感覚がとても陳腐なもののように思えます。

日本にも、「みんな違った考え・振る舞い・発言をして良い」という認識を広めていきたいですね。

 

 

 

まとめ

ドイツのまちづくりをそのまま日本に導入してしまえば良い、ということではないと思います。

 

ただ、日本のまちづくりを考える上で参考になることはたくさんあるなあと思います。

普段大学では日本のまちづくりが取り上げられることが多いので、こうして視点を世界に移して調べていくことは重要だなあと思う今日この頃です。

 

 

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